シエル・トンベ−畠山直哉、アートを求め地下に潜る
畠山直哉
「Ciel Tombé」 (シエル・トンベ)
2012年8月
畠山直哉:畠山直哉と申します。出身は東京です。このシリーズは母国の日本から始まりました。日本の地層は古いので、石灰岩の採石場がたくさんあります。石灰岩はセメント、薬、紙、インク、練り歯磨きなどに使われています。これまで北海道から沖縄まで、日本中の多くの採石場を訪れました。ちょうど東京に住み始めた頃のことです。東京はコンクリートジャングルで、建物や道路は全て石灰で建造されていますが、ある日、都市と石灰岩の採石場は、一枚の写真のネガとポジのようなものだと気づきました。
そして誰かが、東京でも日本でもない、同じような構図が見られるところを教えてくれました。それはなんとパリで、都市の地下にある、地下の石切り場のストーリーでした。古い採石場がカタコンブになっているのです。そこには何百万人分もの人骨を見ることができます。そこで想像しました。地上には街があり、地上には建物や道路、人間の日常生活がある。しかしその地下には、大きな空洞がある。それは何もない空っぽの空間です。そして、そのパリの地下採石場跡の観光ツアーをしました。そこで、「ciel tombé(シエル・トンベ)」という言葉を、時折耳にしたんです。直訳すると「墜ちた天」という意味ですが、実際にはトンネルの天井が壊れて落下したということでした。私はその「墜ちた天」という言葉に大きな刺激を受けました。地下に墜ちた天とは、複雑で、想像力をかき立てませんか? というわけで、パリの地下採石場跡の壊れた天井シリーズを制作することを決心をしました。